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    【バレンシア】 活気を取り戻しつつある街を歴史散歩


    2021-07-15

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    先週、所用でバレンシアに行ってきました。ちょうど去年の今頃もバレンシアに行ったんです。

    去年は、スペイン全体の移動制限措置が終わって、州を越えて旅することが可能なったばかりの頃。コロナ感染もようやく収束したかと思えた時期でしたが、バレンシアの街はほとんどの飲食店が閉まっていて、開いていてもテラスのみの営業、街を歩いている人もすごく少なく、宿泊施設も営業している所を探すのに一苦労。バカンスシーズンはいつも賑やかなバレンシアらしくない、静かな夏でした。

    今回訪れたバレンシアは、天候は日本の梅雨を思わせる雨模様でしたが、嬉しいことに、街には活気が戻りつつありました。

    確かに、以前のような賑わいにはまだまだですが、ヨーロッパ諸国からの観光客が地図を広げながら歩いていたり、宿泊施設も満杯でした。ほとんどの飲食店も開いていて、感染対策上、屋内の入りは少ないものの、どこもテラス席は人でいっぱいでした。

    ヨーロッパ最大級のもモデルニスム建築、バレンシア中央市場。その脇にある軽食屋さんでランチしました。オーダーした小魚のフライ、さすがは本場バレンシア、サックサクでめっちゃ美味しかったです!

     

    いつもは、カウターに溢れんばかりの人が真夜中まで集まるお店ですが、今は、ちゃんと椅子と机に座って、ソーシャルディスタンスをとって食事を取ります。店のおじさんも嬉しそうに忙しく働いていました。目の前の市場は、残念ながら閉まっていました。

     

    時間があったので、午後はバレンシアのカテドラルに寄りました。このカテドラルは最後の晩餐に使われた聖杯で有名。現在工事中のレイナ広場からカテドラに向かい、小さいながらとても凝ったバロック様式の門、プエルタ・デ・イエロから中に入ります。

     

    海の向こうにイタリアがあるバレンシアは、イタリアからルネッサンスがスペインで最初に伝わった都市だけに、街全体がイタリアを感じさせます。この扉の装飾も、イタリアのバロック建築や彫刻を彷彿とさせます。規模は小さいですが、下から見上げると装飾の素晴らしさで、とても大きく感じる門です。

     

    現在、バレンシアのカテドラルがある所は、ローマ時代から重要な神殿があった場所でした。西ゴード族の侵入後は古代キリスト教の教会になり、イスラム勢力侵攻後はムスリムのモスクになりました。11世紀ごろからの十字軍の南下によってバレンシアはカトリックの重要な街となり、13世紀にはこのカテドラルの建設が始まりました。その後、修復・増築などが繰り返され、今もこの街の大聖堂として使われています。そのため、ロマネスク、ゴシック、ルネッサンス、バロック、新古典主義などすべての時代の様式を見ることができます。

     

    プエルタ・デ・イエロを入り、右側へ進むと、奥の部屋に15世紀のゴージャスな聖歌隊席の木彫の囲いがあり、その真ん中に“あの最後の晩餐”で使われたとされる聖杯、サントカリスが置かれています。遠くて見えにくいですが、「これほど大切にされているからには、本物に違いない」と納得。たまに、このカテドラルから聖杯が貸し出されたりするらしいですが、その時の警備の厳重さはローマ法王が来られる時と同じぐらいだとか。

     

     

    遠くから見ると、なにやら新しい感じで、とても最後の晩餐に使ったとは思えないのですが、聖杯のカップの部分がメノウで作られていて、その石の部分がオリジナルで、金属の装飾(取手や土台)は中世に付けられたものだそうです。

     

    この聖杯の関する記述は2世紀ごろの書物に現れるそうです。伝説では、キリストの死後、その母マリアが、この聖杯をキリストの弟子ペドロに託し、ローマに運ばせたとか。当時のローマはキリスト教徒が迫害を受けていたので、その後、他の信者を介してスペインに運ばれたと言われています。その後、8世紀のスペインはイスラム勢力が侵入してあっという間にほぼ全土を征服。そんな中、聖杯は、ピレネー山脈の人里離れた岩場に造られた僧院、サン・ファン・デ・ラ・ペニュ修道院で保管されます。10世紀に造られたロマネスク様式の素朴で閑寂な僧院で、まるで日本の山寺のようなところです。その後、カトリック勢力が国土を回復すると、聖杯も修道院を出て、スペインの北、アラゴン国の王様に献上されます。そして、最終的には15世紀ごろにこのバレンシアのカテドラルにたどり着いたと言われています。歴史の中で長い旅をしてきた聖杯、サントカリスをこのバレンシアで見ることができます。

     

    スペインの町や村はどこを訪ねても、紀元前のローマ時代からの歴史を持っています。ひとつの場所がそこを支配する権力が変わるたびに壊されては新しい街へと生まれ変わる歴史を繰り返して来ました。バレンシアもそんな街のひとつです。旧市街を散歩していると、石が積まれた壁に、壊れた彫刻や古い時代の石など、歴史の断片を見つけることがよくあります。

     

    私たちも、そんな歴史の一部として、きっとどこかに刻まれていくのでしょうね。そんなことを考えながらバレンシアの街の散策を楽しみました。

     

    最後に、バレンシアの海岸で地中海に挨拶してきました。

     

    バレンシアだけでなく、いろんな街が少しずつコロナ以前の活気を取り戻しつつあります。

    収束が近い未来にやってくる事を心から祈りながら、バレンシアを後にしました。

     

    Lucymama 


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