[みゅう]パリ 美術コラム 『マエルテン・ソールマンスとオップジェン・コピットの肖像画』 レンブラント・ファン・レイン みゅうパリ ブログ記事ページ

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    [みゅう]パリ 美術コラム 『マエルテン・ソールマンスとオップジェン・コピットの肖像画』 レンブラント・ファン・レイン


    2016-06-13

  • オランダ黄金期に活躍した画家、レンブラント作の肖像画が新しくルーブルのコレクションに加わりました。この二つの対をなす肖像画は、ルーブルと、アムステルダムのライクス・ミュージアムと共同購入されました。

    それでは、実際に絵画を見てみましょう。

    まずは、『マエルテン・ソールマンスの肖像画』です。

    つば広の帽子をかぶった男性の全身像です。顔は正面ですが、体は少し斜めになり右を向いています。

    まだ少年の面影のこった真ん丸の顔の男性は、こちらを自信ありげに見つめ、グローブを持った左手を軽く前に出しています。

    黒い縦のストライプの上下は、おそらくシルクなのでしょう。光が当たり、生地の光沢が見事に表現されています。肩からは、大きく垂れるようにして、同じ模様のケープをかけています。このケープに隠れて見えませんが、彼の右手は、ポーズをとるために、腰に当てられているのでしょう。

    そのケープの上には、レース地の襟が、肩まで広がっています。襟の上部は、無地の幅広と二重になってアクセント与えています。ふんだんに使ったレースの豪華さは、彼の社会的成功のしるしです。

    花のレースをつなげて作った幅広のベルトが腰上に見えます。

     

    ズボンは、ひざ下までの半ズボンで、長い白靴下をひざ下で止めています。靴下を止めるためにぐるぐると巻いたリボンの端には、ヴォリュームのあるレース飾りがついています。

    彼のはいている靴がさらに奇抜です。ハイヒール(17世紀では、男性の履物!)で、特大の丸い飾りがついています。

    彼は室内におり、背景には、段差が見えます。今この段差から降りてきて、画家の前に姿を現した動きを想像させます。この段差部分、左にちょうど「Rembrandt」とサインがあります。

    後方右側には、カーテンが見え、このカーテンが対になっている『オップジェン・コピットの肖像画』の背景に続いているように描かれています。

    この男性マエルテン・ソールマンスは、アントワープから宗教戦争により逃げてきた裕福な商人の息子で、この絵が描かれた時、21歳。その1年前に、アムステルダムで最も裕福な商人の娘、2歳上のオップジェン・コピットと結婚しています。この女性の父親は、かの有名な世界で初めての株式会社、東インド会社の創始者のひとりだったそうです。

     

    さて、『オップジェン・コピットの肖像画』でも、夫人は全身像で描かれ、こちらも顔は正面ですが、夫に向き合うように、体は左方向に半身になっています。ふっくらとした髪型は後ろで白いリボンでとめられて、後ろにはヴェールが垂れています。町中に出るときには、このヴェールを顔にかけて、日よけ、埃よけにしたのでしょう。

    彼女もまた、黒の光沢のあるシルクのドレスを着ていますが、光の加減で、水玉の模様が浮き上がったように見えます。夫同様に、レースがふんだんに使われた幅広の襟が、肩口まで広がっており、そのレースは袖口にも見えます。このレースの表現こそ、レンブラントの技術がふんだんに使われている部分で、かれは、黒の上に白を乗せたのではなく、白のうえに、黒で描くことで、よりリアルでくっきりとした白のレースを表現しました。

     

    何重にもなった真珠の首飾り、涙型の真珠のイヤリング、真珠のブレスレットといった、アクセサリーは、真珠づくし。東インド会社の遠洋航路によって入ってきた真珠をふんだんにつけて、その裕福さを示しています。左手の薬指には、ダイヤの指輪。右手の指には、黒く塗ったダイヤの指輪です。当時、ダイヤを黒く塗るのが流行っていたのです。

    金の鎖がついた黒いうちわをもって、その姿は、夫の手袋と呼応した動きになっています。金の鎖は腰上で締められた白いレース地のリボンにつながっていますが、そのリボンで大きな花飾りがつけられています。その花は、男性の花のベルトを対になっているのがわかります。

     

    この絵画を、レンブラントが描いたのは、28歳の時。彼の出世作である『テュルプ博士の解剖学講義』を描いたのがその2年前なので、乗りに乗っている新鋭の芸術家とみなされていた時です。

    この作品は、私たちの知る限り、レンブラントがかいた唯一の「原寸大の対になった全身肖像画」です。原寸大の全身肖像画は、フランドル地方で流行りましたが、オランダでは全く見ることができない様式です。モデルであり、注文主であるマエルテン・ソールマンスは、故郷フランドルではやっていた様式でレンブラントに描かたのでしょう。

    顔と手の肌色を抜かせば、白と黒という2色のみで表現しているといってもいいぐらいの色彩の幅の狭さで、ここまで質感が感じ取られるような天才的な技法を思う存分発揮している、レンブラントの最高傑作のひとつです。

     

    さて、この絵画、先ほど共同購入といいましたが、『マエルテン・ソールマンスの肖像画』の所有者がライクス・ミュージアム、『オップジェン・コピットの肖像画』の所有者がルーブル美術館です。所有美術館が別々でも、対をなす肖像画なので、常に一緒展示しようという決まりになっています。そのため、ルーブル、ライクス・ミュージアム交互に展示予定です。

    2016年3月10日から6月13日までルーブルに展示されていました。これから3か月間、ライクス・ミュージアムに展示されます。

    その後、オランダで修復され、ルーブル、ライクスと5年、8年と交互に展示予定です。その代りこの二つの美術館以外には絶対に貸し出されない作品なので、本物を見るには、アムステルダムか、パリに足を運ぶ必要があります。

     

    等身大の絵画こそ、現実を見ないと!

    ご覧になりたい方は、パリのルーブルか、ライクス・ミュージアムへ。

     

    解説があると、美術鑑賞はもっと面白いですね。

    (中村)

    前回のコラムはこちら

    [みゅう]パリ 美術コラム 『天文学者』 ヨハネス・フェルメール


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