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トゥールーズから車で約2時間半、森のなかのくねるような道から突如現れる断崖に立つ村、ロカマドゥールを紹介します。
前回紹介したコンク村と同様、このロカマドゥールという村も、中世10世紀以降、『聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼コース』の1つとして栄え、今ではその巡礼路の一部として世界遺産に登録されています。アクセスが悪く、行くのが難しい場所ですが、なんとしてでも一度は訪れたい美しい村です。
崖の上に建築された村で、頂上に礼拝堂があります。礼拝堂を目指して坂道、階段をひたすら上ります。有料ですが、エレベーターもあるので、体力に自信のない方でも安心。
さて、この村にはさまざまな伝説があります。
一つは、聖アマドゥールの遺骨が発見されたという伝説。これは以前のブログでも紹介しました。このロカマドゥールという村名も、「岩=ROC」と「アマドゥール=AMADOUR」が合わさって作られています。
この、聖アマドゥールは、新約聖書のルカの福音書に出てくるザアカイと同じ人物だという伝説があります。ザアカイは、イエスがエルサレムの途上の村、エリコを通りかかったときにイエスを一目見ようと木に登った人物です。徴税人でみんなに嫌われていたザアカイは、イエスに声をかけられることで改心し、自分の財産を貧しい人に分け与え、キリスト教徒の道に入った、と語られますが、その後、キリスト教の教えを広めにフランスにわたり、最終的にこのロカマドゥールで隠遁生活に入ったという伝説です。1166年にその遺体が腐らずに見つかったという。。。その石棺がノートルダム礼拝堂のすぐ下にあります。
次の伝説は。中世より奇跡を起こしたといわれる「黒い聖母子像」は、実はザアカイ=聖アマドゥールが持ってきたというもの。もしそれが本当だとすれば、この像は1世紀に作られたものになりますが。。。後は、信仰の問題でしょう!「黒い聖母子像」のレプリカがホテルのレセプションにありました。
さらなる伝説は、この岩山に刺さっている剣。中世の吟遊詩人が歌った『ローランの歌』の伝説の聖剣「デュランダル」だというのです。『ローランの歌』に出てくる伝説上の人物ローランは、カール大帝の甥として登場し、カール大帝が天使より授かったという聖剣デュランダルを譲り受けます。
さて、ローランはカール大帝とともにスペイン遠征に従軍します。その遠征中、ロンスヴァルの谷で敵に襲われ瀕死の状態となったローランは、聖剣デュランダルが敵の手に渡ることを恐れて岩に叩きつけて折ろうとします。しかし、剣は岩を両断して折れなかった。これが、『ローランの歌』に出てくるエピソードです。
ロカマドゥール伝説によると、ローランがたたきつけようとして投げはなった聖剣は、ロンスヴァルから数百キロメートル離れたこのロカマドゥールまで飛んできて、そして、その岩山を両断したというのです。
聖剣デュランダルは、ロカマドゥールの岩山にずっと刺さっていたのですが、ある日だれかに盗まれ、いまではそのコピーが岩山に刺さっているとのこと。今度は盗まれないように、チェーンがかかっています。
魅力たっぷりのロカマドゥール、ぜひ訪れたい村の一つです。
(渦)
南仏、ミディピレネーの秘境、ロカマドゥール村
2016-07-18
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